ここは恵方 [SIDE:A]

診療拒否は法律的に是か非か

最終更新日:2006年4月

  1. 診療を断るのはどんな時?
  2. 正当な理由とは
  3. 実例がないのが現状
  4. もうひとつの不安要素
  5. 獣医師も飼い主も適切な判断を
  6. 獣医師の守備範囲
  7. トラブルを未然に防ごう

◆診療を断るのはどんな時?

獣医師法 第19条

診療を業務とする獣医師は診療を求められたときは正当な理由がなければこれを拒んではならない

ちょっと堅い話になりますが、法律の面からこの第19条を見てください。専門外の動物を診療することについてです。

まずは、この獣医師法第19条の解釈に関しては、行政書士としてペット医療のトラブル支援をされているR様、医師であり弁護士であり人間の医療トラブルについて活動されている(かつ、ペットの医療トラブルにも深い関心を寄せていらっしゃる)T様のお二方に(多大なる御迷惑をおかけしつつ)快く丁寧なご意見をいただきました(アルファベット順、順不同)。実名を出すことについて確認をとっていないので、念のためイニシャルでの掲載とし、この場を借りて改めて心から御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

法律の表記に関しては、わかりやすいようできるだけ簡略化して書いてあります。表現上、正確に伝わらないかもしれません。気になる方はyahooなどで検索してみてください。また、ここに書いたのは、先述のお二方のご意見を拝聴しつつ私個人が判断したことですので、お二方には何の責任もありませんことをご了承ください。

さて、犬・猫以外の動物を飼っていて診療上のトラブルに遭ったとき、「この動物の治療ができないなら最初っから診療を断ってくれ」という飼い主さんの声をよく聞きます。或いは、犬・猫であっても、その疾患に対する治療を行うだけの知識や技術がない獣医師に対しても同じ言葉が出てきます。

それに対して、病院側の考えは様々です。 「法律でこう言っている以上、専門外というのは正当な理由には当たらないから断れない」という所もあれば、「理由を説明して断るか、他を紹介するべきだ」という所もあります。

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◆正当な理由とは

一体、何を持って「正当な理由」とするのでしょうか。 これについては有名な説があり、それによればこんな解釈になるそうです。

私が病院から受け取った回答にもこれとほぼ同じ事が書いてありました。

しかし、この「正当な理由」についての解釈には色々あります。素人目にも「専門外」「技術不足」であれば適切な診療行為はできないと思うのですが、法律的な面から言うとこれが「正当な理由」になるかどうか意見が別れるようで、具体的な定義はないのが現状だそうです。

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◆実例がないのが現状

具体的な定義というのは、裁判で争った判例を元に「この場合はこういう状況だからこう」というパターンを作っていくものだということです(2003年6月の現時点ではその判例自体がほとんどないようです)。 そして、このパターンも次のような条件によって全く違う結果になるであろうということです。

要するに、法律的には何も決まっていないのです。「正当な理由」に対する法的基準がない以上、逆に言えば、相手の言うことも「真理」であればこちらの言うことも「真理」であるとも考えられます。

もし、獣医師が「法律でこう決まっているから断れないんだ」と言ったときは、「現時点の獣医師法では抽象的な形でしか決められていない。この件について具体的な解釈をしてもらうためには、裁判で判例をもらわなければならない」と言い返したって罰は当たりません。もちろん、その前提として、飼い主はその診療が適正にできるかどうかをはっきり問い合わせており、一方獣医師は専門外であることを飼い主にきちんと伝えなかった状況が必要ですが。

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◆もうひとつの不安要素

獣医師法第8条には、「第19条第1項の規定に違反して診療を拒んだとき」には獣医師免許の取り消しや業務停止があり得ると書かれています。これだけを過大解釈して、「何が何でも診療を断ることはできない」と考える獣医師が絶対いないとは言えません。飼い主としては、こういう法律的背景も存在し得るということを知っていて損はないでしょう。

現時点では、専門外の診療を求められたときにそれを受けるか否かについては、ひとえに獣医師個人の判断に委ねられています。とすれば、飼い主はその獣医師をきちんと見極めて、必要なことを全て確認するのがペットに対する義務であり責任ではないかと思います。

◆獣医師も飼い主も適切な判断を

専門外の動物の診療を断ることについては、現時点では何の問題もないと言えます。問題なのは獣医師が「専門外」とみなすかどうかです。

動物病院を選ぶのは飼い主です。例え切羽詰まってその病院に飛び込んだとしても、例え診察台に乗せて診療が始まったとしても、「ここでは診てほしくない」あるいは「ここでは診察できないだろう」と思えば、きちんとその旨を伝えて他を当たってください。そして、それを判断するためにも、獣医師とは十分話をしてください。獣医師は、飼い主に求められた時には、診察について十分な情報を説明する義務があるのです。

これは、私の心底からの自戒を込めたお願いです。レイラを診察しようとした獣医師の行動に「えっ!?」と思ったあの瞬間、獣医師を突き飛ばしてでも止めたかった・・・!実際には、その次の瞬間に事故は起きたので止めることはできませんでしたが、そう思わずにはいられません。落ちていくレイラ、意識もうろうとしながら必死で逃げようとするレイラ、動けなくなってヒクヒクけいれんするレイラ・・・あの時のことは今でもスローモーションで目に浮かびます。多分、何年経っても消えることのない映像です。どんなに相手に非があっても、その人にレイラを触らせたのは自分です。その意味で、私は愛するペットを守ってやれませんでした。この自責の念を一生忘れる気はありません。

さらに、「専門外」という観念については、今後更に問題が拡大すると思われます。獣医療の流れとして、人間の医師のように「内科」「外科」「歯科」のような細分化がすすんでおり、専門医としての「認定」も一部始まっています。動物種の違いに限らず、「うちは犬の外科が専門」「うちは猫の内科が専門」といった観念が今後生まれてくるものと思われます。実際、私が信頼していた前任の獣医師は「エキゾチックペットの歯科が専門」でした。もちろん、他の部分の診療も十二分にできましたが、歯科に関しては飛び抜けた知識と技術を持っていらっしゃいました。

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◆獣医師の守備範囲

ちなみに、獣医師が扱える動物の種類についてR様にご意見をいただいたので、それを参考に考えてみました。

獣医師法第17条と獣医師法施行令第2条を併せて読むと
「獣医師でなければ、牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずら、オウム科全種、カエデチョウ科全種(ジュウシマツ、ブンチョウなど)、アトリ科全種 (カナリアなど)の診療を業務としてはならない」
となります。

捉え方によっては、ここに書かれている動物以外の診療については獣医師でなくてもできるようにも思えます。

しかし、実際には獣医師法第1条と第1条の2で、獣医師の業務のひとつに
「飼育動物(一般に人が飼育する動物)に関する診療及び保健衛生の指導その他の獣医事をつかさどること」
とあります。

この「一般に人が飼育する動物」にはペットが含まれると考えて問題なさそうです。よって、ペットとして飼っている動物の診療は獣医師の仕事であり、獣医師はその診療に対して責任を持って当たらなければならないと思われます。

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◆トラブルを未然に防ごう

獣医療に関する法律については、その具体的な解釈(=ペットトラブルの裁判)が始まったばかりです。まだまだ不確定要素ばかりで、はっきりしたことはほとんど言えないのが現状です。

そんな中で頼りになるのは自分の目だけ。愛するペットを守るには、獣医師と十分なコミュニケーションをとり(言いたいことはきちんと伝え、相手の言いたいことは理解できるまでしつこく聞き直し)、人間として他人(=獣医師)を見る目を養うことが必要ではないでしょうか。愛する我が「仔」を「判例」なんかにしたくはないでしょう?

ペットに関わる訴訟は増加の一途をたどっています。ここで自分が泣き寝入りしたら何も変わらない、と、心の傷を癒すことさえ後回しにして法律の解釈に立ち向かう方々が沢山いらっしゃいます。判例となってしまった被害動物とその飼い主さんには心からのお見舞い・お悔やみを申し上げます。

余談ですが、この第17条に挙げられている動物を見ると、日本の獣医療の歴史がよく分かります。後ろの3種(オウム科、カエデチョウ科、アトリ科=まさに愛玩するための動物)は平成12年になって追加されたもので、それまで表記されていたのはその前の9種だけです。動物を「ただ愛好する」ためではなく、「職業を持った動物」として飼ってきた歴史がかいま見られる一文です(それが「悪い」と言っているのではありませんよ)。

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